佐護ヤマネコ稲作研究会

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  @ 早期湛水

 田植えの前に田んぼに水を入れておくことで、プランクトンやミミズが増えます。また、早く発芽した雑草を、代掻きで土の中に閉じ込めてしまうので、抑草の効果も期待できます。
 対馬にしかいないカエル、ツシマアカガエル、チョウセンヤマアカガエルの2種は、2月から3月の早い時期に産卵します。この時期に田んぼに水を張っていると、これらのカエルも産卵することができます。
 

 

  A 種子消毒

 伝染病を予防するために、種もみをお湯で消毒したり、微生物を使って病原菌を退治したりして、農薬に頼らずに伝染病を予防します。


 
 お湯で種もみを消毒している様子→
約60度のお湯に10分間浸けて消毒します。


  B 深水管理

 稲の成長とともに水深を深くしていきます。水深を深めに保つことで、農薬を使わずに雑草の発生を抑えることができます。また、田んぼの水温が高くなるこの時期、水路からメダカやドジョウも田んぼに上がってきて産卵します。
 

 

  C 中干し延期

 稲の株数が過剰に増えるのを抑制し、土の中に酸素を入れて有害物質を無毒化するために、一度田んぼの水を抜きます。この、中干しのタイミングが早すぎると、田んぼの中のオタマジャクシやヤゴが成長する前に死んでしまいます。研究会では、オタマジャクシがカエル、ヤゴがトンボになる時期を待って、中干しを行っています。

 稲の成長の具合から、中干し延期が難しい場合は、田んぼの一部に溝を掘ったり、ビオトープとつなげたりして、水中の生きものが避難できる場所を用意しています。




 

  D 畦草管理

 田んぼへの日当たりをよくするため、畦草を刈ります。畦草を刈ることで、稲の汁を吸うカメムシの発生をある程度予防することにもつながります。このとき、一部に刈り残しを作ったり、一度に全て刈らずに輪番で刈っていくなどして、畔に生息している小動物が逃げ込める場所を残します。



 
→こちら側はきれいに刈りそろえていますが、
向こう側は刈り残しています。
このように刈りこむ時期をずらすことで、
生きものの逃げ場を作ります。

  E 有機資材を使った土づくり

 有機物を田んぼへ入れると、それを餌にする微生物が増えます。微生物は、有機物を分解し、稲が吸収できる無機物の形に変えてくれます。最初から無機物の形の化学合成肥料ばかりを使用すると、餌がないので微生物が減少し、土が固くなってしまい、生きものがあまり住めない土になってしまいます。
 稲作研究会では、収穫後のワラを土にすきこんだり、堆肥をまいたり、地域由来の有機資材を積極的に活用し、地域内での資源循環にも努めています。



 
 →稲を刈った後のワラを切り刻み、
養分として田にまきます。


  E 冬期湛水

 湿地となる平野が少ない対馬では、特に田んぼに水がなくなる冬は、生きものが利用する水場がほとんどなくなってしまいます。田んぼに冬でも水を張っておくことで、湿地を求めて渡り鳥がやってきます。冬の田んぼに集まる生きものは、ヤマネコにとっても貴重な餌です。
 また、冬に田んぼに水を張ることで、ワラの分解が進み、藻類も増え、稲の養分となります。田んぼにやってくる水鳥たちの糞も貴重な肥料です。プランクトンやミミズなどの働きで、土が柔らかくなり、「トロトロ層」が形成され、田んぼの水持ちをよくしたり、雑草タネを閉じ込め発生を抑えることにもつながります。

 


 

  ■ 生きもの調査

 田んぼに入り、水をすくったり、稲株を叩いたりして、田んぼの周りに生息している生きものの調査を行います。生きものの出現状況を定期的に確認することで、害虫の発生の状況も把握することができ、本当に必要な時期に必要な場所にだけ有効に農薬を使うことが出来るので、農薬の使用を減らすことにつながります。稲作研究会では、だいたい、田植えのあと(おたまじゃくし、ヤゴなどの水生生物が見られます)、中干しの前後(中干しのタイミングをみます)、そしてウンカが大量発生する秋口に生きもの調査を行なっています。
 


 

     


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写真提供:環境省対馬野生生物保護センター、川口誠  イラスト:松野由起子  構成:川口幹子 編集吉野 元